『A』
「こいつ…
空手が使えたのか!?」
「いや…今覚えた」
「「っ!?」」
「あ…あ〜、て、適当こくんじゃ、ないんだな!」
大男が亮に襲い掛かる。
「待てっ!」
「次は柔術か…」
襲い来る男の鎖骨に、手刀を振り下ろす亮。
柔術は、戦場で矢尽き刀折れた時の最後の武器として、戦国の世に考案されたものだ。
その為、手刀は刀の代用品、刀を振り下ろすが如く、正方形を平行四辺形に潰すように放つ。
「ガァっ!」
鎖骨を砕かれ、一瞬動きが止まった男の懐に潜り込み…
「エイ……ヤァッ!」
腰で跳ね上げ、男を投げ飛ばす!
柔よく剛を制すの言葉通り、本来柔法とは、身体の小さな者が、大きな者を制するというもの。
なので、相手より身体の小さな亮が、大男を投げ飛ばすのは、技の本質に合っている。
亮の使った技は、柔道の最高の必殺技、試合では使えない禁じ手“山嵐”。
相手に受け身を取らせないというこの技は、数ある柔道の投げ技の中でも、ピカイチの破壊力だ。
ドゴォォォンッ!!
という、馬鹿デカイ身体を叩き付ける強烈な衝撃音が鳴り響く。
大男は口から泡を吹いて、気を失った。