『A』
「後………一人」
投げ終えた低い体勢から、ゆらりと立ち上がり最後の一人をギロリと睨む。
空手家がやられ、フォーメーションが取れなくなった時点で、既に彼らに勝ち目はなかった。
「〜〜〜っ!」
男は僅かに躊躇したが、骨法独特の構えを取り、足をスライドさせ移動するという、これまた骨法独特の足捌きで、亮の周りを回り、警戒する。
「!………な?」
男は我が目を疑う、亮の取った構えは、自分と全く同じもので。
亮の足捌きもまた、自分と全く同じものだったからだ。
「こ、こいつ…まさか本当に今、覚えたのか?」
一度見ただけで、相手の動きを完璧に真似て、自分のものとする能力。
これが、亮の特殊技能《技能摸写(スキルダビング)》だ。
骨法の動きを完璧に真似、足をスライドさせ近付く亮。
前足に隠れて後ろ足がスライドする為、いつ近付かれたのかがわかりづらい。
「パウッ!」
上半身を全く動かさずに蹴りを放つ。
移動も攻撃も、予備動作なくノーモーションで行う。
隙間を極限まで廃した動き、これが、骨法の特徴だ
相手の膝を蹴りバランスを崩し…
「フォウッ!」
骨法の最大の一撃、脳を揺さ振る掌法の妙技を、全くそのままにお返しした。
「信じ…られん
バケモノだ」
脳を揺さ振られ、男はその場に崩れ落ちた。
「…あんがとよ
事情はどうあれ、アンタらのおかげで、また強くなれた…」
気絶する三人に軽く会釈をする。
新しく得た力で三人を倒した亮は、少しも休むことなく、再び少女を探しだした。