『A』
史上最大の親子喧嘩
◇
立つのがやっとの状態の貫を侮蔑の目で見下げ、一輝は笑う。
「クツクツクツ
好きにさせない…か
吠えたところで、貴様に何ができる?
【この私に近付くこともできない貴様が!】」
耳からではなく、魂に直接訴えかける一輝の言葉。
それは、強烈にビリビリと、貫の魂を揺さ振る。
「………効かねぇ」
そうボソリと呟き、一歩前へと歩み出る貫。
「なっ!?
ば、馬鹿なっ!?
【動くな!こちらへ近付くんじゃない!】」
「効かねぇ」
また一歩、ズイと貫は歩み出る。
「な…貴様のような矮小な存在が、二度も私の言葉を跳ね返すだと!?」
驚く一輝を尻目に、ズンズンと進む貫。
「〜〜〜!
ええい!
【動くな!
こっちへ来るなと言っている!】」
「効かねぇって言ってるだろ!クソ親父が!
【おまえこそ、オイのパンチでフッ飛べ!】」
「ぬぅっ?!」
筋肉等まるでなく、格闘技なんて全くやったことがない、貫の素人丸出しのパンチを受けて、一輝の身体がフッ飛ぶ。
殴られた衝撃よりも、ズシン、と魂に響いた、先程の言葉。
「私と、同じ血………
身体に流れる黛の血が、今覚醒したというのか!?」
神の領域を侵す特殊技能、《強制言語(ザ・ワード)》。
その力に、貫は覚醒した。
今、史上最大の親子喧嘩が始まる。