『A』
「【私は、貴様よりも遥かに強いっ!!】」
高らかと宣言する一輝、この言葉は、貫を萎縮させる為だけに放たれたものではない。
他ならぬ、自分に向けての言葉でもある。
強力な強制力のある言葉による自己暗示、自己を奮い立たせ、鍛え抜かれた己が身体に、更なる力を与える。
「【オイは…絶対に負けん!】」
貫もまた同じことをする、強制言語による身体能力の向上。
健全な肉体には健全な魂が宿ると言うが、この場合はその逆。
強靭な魂に導かれ、肉体はその性能を限界以上に引き出される。
「受けよ、愚息がっ!
猛る虎の一撃をっ!」
「【効くかよぉっ!
そんなもん!】」
「猛虎…硬爬山!!」
地響きのような震脚、その後、中段に放たれる掌底、八極拳の絶招の一つで、その破壊力は鋼鉄をも砕く。
それを、腹にまともに受けたにも関わらず、か細い貫の身体は、傷一つ負っていない。
例え、相手がどんな攻撃をしてこようと、自分が絶対に効かないと思ったら効かない。
もし、貫が少しでも駄目だと思っていたら、貫の身体はくの字に折れ曲がり、たちどころに絶命していただろう。