『A』
 
轟!…と、風を切り拳が唸る。


瞬!…と、腕がしなやかにしなる。


段!…と、震脚の音が響き渡る。


斬!…と、肘が相手の肉を刔る。


流!…と、素早く身体が動く。

轟!瞬!段!斬!流!

拳を振り切れる距離での正面からの殴り合い、ラッシュ競べ。

ラッシュとは無酸素運動、鍛え抜かれた一輝の肉体と違い、貫の心肺機能はとっくに限界を越えていた。

貫の呼吸は、既に止まっていた。

激しく損傷した死体に近い身体を動かしているのは、もはや貫の意志のみだけだった。

延々と繰り返される打撃戦、無限に続くかと思われた攻防。

だが、無限等この世に存在しない。

遂に片方が失速し、戦いは終わりに近付く。
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