『A』
防戦一方の亮であったが、怒涛の攻めを受けて尚、かすり傷一つ負ってはいないのは流石である。
一旦距離を取ろうとする亮、それを逃すまいとする怪盗ジャムであったが…
「っ!」
追撃には出られなかった。
「………仲間がいたとはね」
怪盗の右腕から滴り落ちる鮮血…。
500mもの距離から、目にも止まらぬ速さで動く標的の利き腕を、『A』自慢の狙撃手が、的確に狙撃したのだ。
「そういうことだ、遊びはここまでだぞ」
美術館の屋上に現れた第3の人物は、煙草の煙を吐き出しながらそう告げた。
「所長!
…今までどこにいたんだ?」
「ああ、う○こしてた」
「コラー!
女性がう○こなんて言ったら駄目だろう!!?」
「おぉ!?
…まさか怪盗に説教されるとは…
安心しろ、冗談だ
本当は近くのコンビニで“ジャソプ”を立ち読みしていて遅くなった」
「もっと最悪じゃん!?
なんで!?
なんで今見ちゃったの!?」
ツッコミ役の貫がいないので、頑張ってツッコム亮。
そのツッコミを無線で聞いて、石姫が一人ほくそ笑んでいたことは、亮には内緒にしておこう。
「なんでって…
発売日だったからな?
普通、発売日に立ち読みするだろう?」
「………さいですね」
全く少っしも悪びれず、さも当然、という風に語る、このクソわがまま女に対して、亮はこれ以上ツッコムことは無駄だと悟った。