『A』
 
「………だ!って言われても…」

「ヒメー頼むー」

[説明するです!]
「うぁわ?!」

耳にしたインカムから突如聞こえた石姫の声、驚き思わずのけ反る亮。

[“スタングローブ〜大往生〜”…ぶっちゃけ、スタンガンのグローブ版です
コンセプトは
“おいおい、こんな電圧流しちゃマズイっしょ?え?あ?…殺す気?”
です
通常のスタンガンの約10倍の電圧を搾り出すことが可能です
パワー調節機能がついていますので、心臓マッサージにもお使い頂けます、が、調節を間違えたら大往生しちゃうので気をつけて欲しいです]

「ふふ、ヒメ、完璧だ!」

[…どうもです]

「ワハハハ!
フルパワーで使えばシロナガスクジラをも大往生させられる代物だ!
命の保証はできんぞ!?」

「…あれ?デジャヴュ?」

「………」

一人頭を抱える亮と、マスクでよくわからないが、おそらくは赤面している怪盗ジャムが、完全においてきぼりを喰らっていた。

「………なんか、どっちらけたね
それに…このままでは私の負け、のようだね、“今の装備では”」

ジリジリと後ずさる怪盗ジャム。

「ここは、怪盗らしく、ドロンすることにしよう!」

後ろ向きで、屋上から飛び降りる、シルクハットが飛ばないよう、しっかりと片手で押さえながら。

「アァー〜ッハハハハ!
また会おう!諸君!」

地面に激突する瞬間、ボン!と煙が広がる。

煙が晴れた後には、当然ながら怪盗の姿は見られなかった…。

「不利と見るや即撤退…か
引き際を弁えているな」

「おいおい!何悠長にしてんだよ!
逃げちまったんだぞ!?」

「構わんさ、依頼内容は捕まえる、じゃないからな」
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