『A』
推進剤を使い、ジェット噴射で軌道を変える三つの衛星。
寸分の乱れもなく、一定の間隔を空け、まるで団子の兄弟のように連なって地球目掛けて前進をする三つの衛星。
落とす場所は、極東の島国の首都の空き地、既に人がいないことは確認済みである。
地球にいながら…ましてや、携帯で組み上げたプログラムで、これほどの正確な遠隔操作を可能とする技術…
『電戦のA』綾瀬石姫、その名は伊達ではなかった。
………
一つ目の衛星が大気圏に接触、ゴォォォォ!とけたたましい音を立てながら、真っ赤に燃える。
それに続く二つは、一つ目の衛星を犠牲に、全くの無傷のまま進んでいく。
一つ目が燃え尽き…二つ目が盾に、…更に二つ目が燃え尽きた時、三つ目の衛星は、大気圏を越えていた。
「…メテオストライク」
石姫が、彼女が持つ数々の技の中でも、最も破壊力のある技名を唱える。
夏の日の昼下がりの平和な午後に、突如として衛星が落ちて来る。
それが、木から降りられない一匹の小猫を助ける為のものだとは、誰も予想だにしなかったろう…。