『A』
 
空港で荷物を受け取りロビーに出ると、小柄な中国人の中年男性がこちらに寄って来た。

チャイナ服に、いかにもといった帽子、いかにもといった髭、いかにもといった眼鏡、わかり易い位に中国人らしい格好の男性だった。

「やぁ亮、久しぶりだネ」

「劉老師…ご無沙汰しております」

右拳を左掌で包む抱拳礼をしながら、ひざまずき挨拶をする亮。

「老師等ト…君より弱いのニ」

「いえ、老師から授かった化勁の秘伝に、日々助けられています
感謝してもし足りません」

「ハハ、授けたというよりハ、君が見様見真似でマスターしてしまったのだがネ」

「いやいや…」と、互いに謙遜し合う会話が続く中…貫は驚きを隠せずにいた。

大塚亮…超マイペースで、誰にでもタメ口をきく、枠にはまらない企画外の人物。

そんな傍若無人な男が、ここまで礼を尽くす相手がいたということに。

「まぁ、こんなトコで話すのもなんだからネ
とりあえず行こうカ
車を用意してアル」

「はい、老師
…オラ、堀田、行くぞ!」

空港から出て、劉が用意していた車に乗り込む三人。

言ってはなんだが、かなりのボロだ。

それに長時間乗り続け、更に、進めば進む程、どんどんと寂れていき、遂には舗装されていない道の上を走る羽目になり…着いた頃には、貫のお尻は見るも無惨なものになっていた…。
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