『A』
 
「一軒倒したからついでに全部…か
大塚さんらしいな…」

「?
あ〜…何か勘違いしてるようネ」

「え?大塚さんが喧嘩好きって話ですよね?」

「違う違う
私はネ、彼が優しいト言いたかったのだヨ」

「優しい〜〜〜?!
大塚さんが道場破りしまくった話から、どうしてそんな単語が出てくるんです?」

「フム、異国の人ニハ理解しづらいだろうガ
我が国でハ、武術とは生活から切り離せないものデ、武術ヲ生活ノ手段としている者も多くいル
つまり、門下生に技ヲ教える代わりニ、お金を貰って生活するわけだネ
じゃあ…ここで質問ダ
誰とも知らない一人の異国の若造に倒された道場に、君は入門したいと思うかネ?」

「思わないですね
………あ!じゃあ?」

「そう、誤って倒してしまった相手ハ、道場主だっタ…
このままでハ、悪評が立ち、門下生は集まらズ、生活に困リ、いずれ路頭に迷うことになるだろウ…
だったら…」

「自分の強さを広め
あの日本人に倒されては仕方がない…と思わせる
その為に道場破りを続けたわけですね」

「ふふふ、それガ、酷く不器用だガ、彼なりの優しさなのサ…」

「なるほど…本当…実に、大塚さんらしいですね
しかし、もう少しいいやり方見付からなかったんですかね?」 

「フフフ、確かニ
それは私も同感ダ」

「ですよね」
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