VAGUE
そう言ってあたしの右手から奪い、にこにこして何かしゃべっている。

「キレーな顔」
思考のつもりだったが音になって出ていたらしい。
喋り続けていた男の口が止まる。
「え?」
「キレイナカオダネェっていったの」

前を向いているので表情は読み取れないが、また一瞬間があった。

幼い顔には興味がない。一重瞼が好きだ。でも、綺麗だと思った。だから言った。陶器のようなこの顔なら、きっとかなりもてるだろう。口調が慣れを物語っている。

「うわーやべ。嬉しいなぁ。そんなこと言って調子にのっちゃうよ?ね、おねえさんなんで僕見てたの?」
「ぬいぐるみがついてるから」
「何が?」
「ぬいぐるみ」

あぁこれね、という感じで荷物を左に持ち右手で携帯を見せる。歯が白い。一瞬煙草の匂いがする。

「かわいいっしょ。でかいからでちゃうのこれ。目につくよねーはずかしいなぁ」
「かわいい顔なのに」
「かわいいかぁ?ピンクだからかわいくみえるだけじゃん?よく見てよこいつ」


なんでだっけ。なんでこのオトコはアタシの荷物を持ちよく口を動かしてさっきから大きな美しい目でアタシを見て笑ってるのだっけ。

ダレダコイツ?
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