VAGUE
「かわいいのに」

にっこり笑ってよく顔を見てみた。22くらいだろうか。最近売れているアイドルによく似ている。

慌てて男が地面に置いていた荷物を掴んだ。

「俺ついてく。荷物持ってるし俺がおね…」
「かわいい顔してんのに変なぬいぐるみつけて頭悪そうなガキだなぁと思って見てたの。帰る」

大きな目を更に丸くさせ、硬直したまっすぐな視線。やっとよく動く口が止まったのを微笑んで見た。本当に綺麗な目。まつげが異様に長い。黒目がより大きく見える。

「重かったから助かったよ。ありがと」

呆然と立ち止まったまんまの男の赤くなった左手からそっと袋を取り、持って歩きだす。

気がつけば商店街を抜け、パチンコ屋の前まできていた。そこの角を曲がればすぐにマンションが見える。

あたしは飼い犬だ。
今日も飼い主の帰るのをじっと待つのだ。
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