恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 係長は私の足を気にしてか、

 通りに出るとすぐにタクシーを拾った。

「ちょっと行ったところに、いい店があるんだ」

「そうなんですか? 楽しみ」

 足は痛むけど、それも私たちの物語の中では

 きっと必要な要素なんだ。

 私は自分が主人公になった気がして、

 この先の甘い展開を妄想する。

 タクシーの中って、もどかしい。

 遠くはないけれど、密着することもできない。

 これがこの時間の満員電車なら、

 人の流れに任せて触れ合えたのに。

 ……なんてね。

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