恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~
エレベーターの扉が開いて、
二人だけの空間は別のカップルに侵される。
私はさっきより彼に近づき、
彼だけに聞こえるほどの小さな声で囁いた。
「是非、また誘ってください」
斜めに見上げれば、
切れ長の目が緩む。
次にエレベーターの扉が開いたのは、
地上に到着した時だった。
秋風が火照った頬を心地よくくすぐる。
「寒くない?」
「ちょっと」
「じゃあ、帰ろうか」
帰りのタクシーでは、
手と手が触れ合っていた。