恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 月初に集めた書類の処理が終わり、

 異動日早々お世話になった大量の伝票たちを専用の倉庫へと運んだ帰りのこと。

 廊下で外出前の陣内係長を発見した。

「おっ、ゆめちゃん」

 切れ長の目がにっこりと下がり、

 その表情の可愛さに胸がときめく。

 私たちの進展といえば、

 二人のときは鴇田さんではなくゆめちゃんと呼ばれるようになったことだ。

「お疲れさまです、陣内さん」

 軽く会釈をすると、

 私の髪からはトリートメントの香りが漂う。

「お出かけですか?」

「ああ、ちょっと取引先まで」

「お気を付けて」

「ありがとう」

< 127 / 280 >

この作品をシェア

pagetop