恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 中学に上がろうというときのことだ。

「ゆめ、あんたはたくさん恋愛をして、本当に好きな人と結婚しなさい。絶対に妥協したらダメよ」

 母は切羽詰った顔でそう言ってきた。

 母は父との結婚を心底後悔していたのだ。

 親同士が無理矢理セッティングした見合いだったとはいえ、

 もっと慎重に行動しておけばよかった。

 決めてしまうのがあまりにも早かった。

 私が好きなのは、あんな男じゃない。

 もっと顔も性格も良くて、

 包容力のある男性と結婚したかった。

 母のそういう気持ちが、

 嫌と言うほど伝わってきた。

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