恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 腹立たしいけど、江藤さんは何も悪くない。

 私はちょっと気まずいけど、

 素直に答えることにした。

「昔、付き合ってたんです」

 彼女の顔が、ピクリと動く。

「昔?」

「ええ、昔」

 大輔なんてやめとけばいいのに。

 とは言わず、私はペコリと頭を下げた。

「じゃ、失礼します」

 陣内係長もいないし、気まずいし。

 とっとと退散しよう。

「鴇田さん」

 再び彼女に呼ばれ、

 再び条件反射で振り向く。

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