恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 すっかり肌寒くなった秋の夜へ身を投げ出すと、

 自分がすごく寂しい人間に思えたりした。

「ゆめちゃん?」

 ふと後ろから聞こえた声に振り向くと、

 今日も切れ長の目が素敵な陣内係長が退社していた。

「陣内さん……」

 複雑な気持ちで会釈。

「今帰り?」

「はい」

「この間の埋め合わせってわけじゃないんだけど、これから飯でもどう?」

 係長は今日もカッコイイ。

 優しいし、暖かい。

 だけど頭をよぎる、大輔との過去。

 あんなに夢中になっていたのに……

「すみません、今日はちょっと」

 もう何も感じなくなっていた。

< 169 / 280 >

この作品をシェア

pagetop