恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 こんなとき、後ろの方で携帯が鳴る音がして、

 振り返ったら彼がいて……

 なんていう妄想をしてみたけれど、

 残念ながらそれらしい音がすることもなく。

 大輔からの返信もないまま、

 私はとぼとぼと階段を上った。

 東京メトロのくせに、どうして地下じゃないのよ。

 なんて力なく悪態づきなから。

 ゆっくりゆっくり上っていたけれど、

 そろそろ改札階だ。

 電車はすぐに来る。

 階段を上りきった私は、Suicaを取り出して真っ直ぐに、改札に向かった。

 しかし、

 改札まであと2メートルというときだった。

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