恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

「聞いたの。大輔と陣内さんのこと」

 白状すると、大輔の眉間に窪みができた。

「……そうか」

「こんなこと言ったらまたバカにされるかもしれないけど、今まで舞い上がってた気持ちが一気に冷めちゃって」

 気まずいけれど、怒られちゃうかもしれないけど、

 私は正直に話す。

「そしたら、大輔にものすごく申し訳なくなってきて」

 改札に向かう人たちやアナウンスに負けないように、

 一つ一つ、言葉を選ぶ。

「この間、あんな態度取っちゃったし、どうしても謝りたくなって。それも、電話とかメールじゃ嫌だったから……会いたくなった」

 大輔は眉間にシワを寄せたまま、

 暫く何も言わずに黙っていた。

 たったそれだけのことで……って

 呆れられているのかもしれない。

< 178 / 280 >

この作品をシェア

pagetop