恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 驚いた。

 あの二人とは出会って数十分だというのに。

「何でわかったの?」

 ずっと一緒にいる私でさえ、10年間気付かなかったのに。

「見てりゃわかるさ。マスターなんて、俺に敵意むき出しにしてたし」

 あの穏やかな健吾が、敵意むき出し?

「はは、まさか」

「いや、マジだから。これ以上梨香ちゃんと話してると、俺やられんじゃねーかと思って出てきたんだよ」

 もしかして、私ってものすごく鈍感なんだろうか。

 私は健吾の敵意なんて、これっぽっちも感じなかった。

「でもさー、あの二人付き合ってないんだよ」

「え?」

「体だけ、なんだって」

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