恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

「は、はあ?」

 大輔の親指は私の唇の端をなぞって、

 そのまま手ごと頬へ移る。

「俺はあの頃とは違うぞ」

「え?」

「何が? って思ったろ」

「うん」

「でも言わない。気になるだろ?」

 気になる。

 けど頷いたりするもんか。

 そうやって女を騙して貢がせてるのね。

 私はパッと大輔の手を払う。

「趣味悪い」

「わかってないな。何事も、秘密裏にコトを進めるのが大人の楽しみなんだよ」

「そんなの楽しくない」

「だからマスターと梨香ちゃんの秘密の関係に気付かなかったんだ」

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