恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~
「梨香にとって、健吾は特別?」
「そうね、ある意味特別よね」
なんだかもどかしい。
お互いに素直になればいいのにというもどかしさ。
「ある意味って?」
「ゆめには言ってなかったけど、あたしの初めての相手、健吾なのよ」
「えっ? ハンドボール部の先輩じゃなかったの?」
「ゆめには言えなかったから。健吾とのこと」
梨香は懐かしむように微笑んで、
長くてゆるく巻かれた髪をかき上げる。
恋愛マスターの梨香が、今日ばかりは少女のように可愛らしく思えた。