恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 スーツの上着だけ脱いで風呂場へと向かった大輔は

 いつもみたいに私のことを茶化したりからかったりはしなかった。

「まだあんたのこと好きなのよ」

 という梨香の言葉が頭の中をこだまする。

 ねえ、大輔。

 私のこと、好きなの?

 恋ってこんなにも苦しいものだったっけ。

 昔、付き合う前はあんなにも素直になれたのに。

 あなたのことが好きですよって、全身で表現できたのに。

 息苦しくて、不安で、

「好きじゃないよ」

 って言われるのが怖くて何もできない。

 人を好きになるのって、こんなにも切ないものだったっけ。

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