恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

「別に、嫌ならいいけど!」

 私は立ち上がり、洗面台に向かった。

 ドライヤーで髪を乾かすために。

 というのは建前で、本当は逃げ出した。

 温かい風に髪を靡かせると、自分から大輔の匂いがしていることに気付く。

 こんなに私の胸をつついておいて、

 肝心なことは何一つ言わない。

 そして自分も言えない。

 曖昧なこの状況に、私は早くもギブアップしてしまいそう。

 恋って、こんなに恥ずかしいものだったっけ。

 髪が乾いて、洗面所へ逃げている理由もなくなって。

 私はとりあえず、ソファーの部屋に戻る。

 大輔と目が合うと、彼が立ち上がった。

「寝るぞ」

 私は不機嫌な顔のまま、大輔と一緒に寝室へ。

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