恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~
「それより、梨香」
「なに?」
「健吾とは、話した?」
梨香は黙ってしまった。
電話口で黙られてしまうと、ちょっと困る。
「健吾、梨香のこと好きって言ってた」
「……嘘よ」
「嘘じゃないよ。聞いたもん」
それからも梨香は煮え切らない態度を取って、
健吾の気持ちを信じようとはしなかった。
きっとこの10年間、二人は私の知らないところで色んなやり取りをしてきたんだと思う。
だけど、素直になれない二人は
体は繋がりつつも心だけはすれ違って、
それこそモラトリアム状態に陥っているのだ。