恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 梨香がゆる巻きの髪を耳にかけると、

 ダイヤのピアスが照明を浴びて七色に輝いた。

「全てを失ってもこの人と一緒にいたい、とか、思ったことないのかってことよ」

「全てを失う?」

「そう。全て。お金とか自由とか、友達とか家族とか」

 何それ?

 そんなものを失ってしまうような人なんか、

 好きになれるわけがないじゃない。

 頭のいい梨香にしては珍しく、

 滅茶苦茶なことを言っていると思った。

「わけわかんない。そんな人、好きにならないし」

 
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