恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 健吾が梨香のおかわりを持ってきた。

「健吾はどう思う?」

 梨香の問いに、健吾は苦笑いを浮かべた。

「俺は男だから、女の考えなんてわかんねーけど」

 そう前置きして、私のグラスを下げる。

 そして新しいグラスを出すと、

 それに氷を入れ、一度ヒゲに触れた。

「全てを失ってでもついて来てくれる女しか、本気では愛せないよ」

 梨香と健吾の視線が私に刺さる。

 それって、つまり、

 私は男を愛してもいないし、

 男に愛されてもいなかったということ?

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