うなうな
「ちゃんと授業に集中しろ」
窓の外をぼぅと眺めていたら、文人に肘で小突かれた。
「あぁ…うん」
ちらりと横目で見た文人は、真剣な眼差しで授業を聞いている。
その横顔が愛おしくて、何故か遠くに感じて。
いつか文人は俺との事を過去にしてしまうんじゃないかとか、本当は神田が好きなんじゃないかとか。
ありもしない妄想が頭を巡る。
風が吹き、机の上のプリントが落ちた。
何やってんだと呟きながらそっと席を立ち、床にしゃがみながら拾い始める文人。
「ごめん…」
そう呟き、俺も床にしゃがみ込む。
一枚、一枚。
最後の一枚に手を伸ばした時、文人の手が触れた。
ビクッとして引こうとした文人の手を握りしめる。