ストレートラブ





「今日からお世話になります、滝沢沙良です!短い間ですが、よろしくお願いします!」



店長にバイトのことを手短に教えてもらった後、従業員の方に挨拶をした。人数は4~5人程度。



あまり大規模なお弁当屋さんじゃないため、少ないらしい。でも、お盆シーズンは注文が多く、人手が回らないのだ。



「じゃ、滝沢さんは垣根さんに教えてもらってね」



「あ、はいっ」



垣根さんという年配の女性を紹介した店長は、奥の部屋へと姿を消した。



「滝沢ちゃん、早速仕事に移ろうか!」



ニコッとした笑顔になると目尻が下がり、優しさが溢れる垣根さんがそう言った。そして、あたしの人生初のバイトが始まった。



皿洗い、品出し、今日の分だけでなく明日の分の野菜の準備。あっ、電話対応はテンパって受注ミスをしないようにと言われちゃったけど。とりあえず……半端無い疲労感。



「滝沢ちゃんしっかり!」



笑顔の素敵な垣根さんをはじめ、他の従業員からも指摘を受け、ちやほやされる暇もなく、慌ただしい初日を終えた。



「ほら、これ飲んで元気だしな~」



でも、帰りに垣根さんがジュースをくれた。単純なあたしは、その一言で元気になれた。




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