ストレートラブ
「バイトをするっていうのは聞いてたけど、ココっていうのは知らなかったよ」
「あれ?沙良さんのバイト先と近いんだって言ってたのに。言い忘れたんすかね?」
夏生に限ってそんなわけない。わざと教えてくれなかったんだな、絶対!
「沙良さん、今帰りっすか?」
「うん。2人も?」
「はい。俺達、今日は一緒だったんっす。あ!今日はこれから用事あるんすけど、明日は俺いないんで、紘樹と一緒に帰ったらどうっすか?」
「里津くん、嬉しい情報をありがとう!では、山下くん明日一緒に帰ろう!」
「嫌」
「なんで~。女の子1人って危ないでしょ?途中まででもいいから、一緒に……」
「里津、帰るぞ」
必死にアピールをしているのにも構わず、早くこの場を去りたい様子の山下くん。
「明日もアタックするからね~!また明日!」
小さくなる背中に、いつまでも大きく手を振るあたし。もちろん、山下くんが振り返ることはなかった。
その日の夜、夏生に山下くんのバイト先を教えなかった理由を聞いてみた。
「あぁ、どうせ会うだろうと思って言わなかったよ」
サラッと流されたのは言うまでもない。