ストレートラブ
山下くんを気にしながら、袋からパンを取り出して頬張るあたし。ん、美味しい。
「山下くん!コレ美味しい!」
「率直な意見をどうも」
後は会話なし。ちぇっ。俺にも一口くれよ!とか言って、関節キスしちゃうかなって想像したのに。
「はい、どうぞ」
すると、里津くんがテーブルにカップを置いた。
「あたし頼んでないよ?」
「誰かさんから頼まれちゃったんすよ」
誰かさんって……慌てて山下くんを見た。
「なに」
「これって山下くんから!?」
「だったら、何」
「超嬉しい!ありがと~!泣けてくるよ~」
「たかがコーヒーだろ」
だって、こういうのはダメでしょ。好きな人から、こういうのされると泣けちゃうんだから。
「里津がおごれって言ったから」
「それでも嬉しい!あっ、1つ言っていい?」
「付き合うとかナシだから」
「え~。いつになったら振り向いてくれるのさ~」
「いらっしゃいませ」
いつものように話をブチり、お客さんの相手をし始めた山下くん。でも、今はこのコーヒーで許せるもん!
それから1時間、あたしはニヤニヤしながらパンとコーヒーと共に、山下くんを見つめていたのだった。