ストレートラブ





「遅いぞ」



受付の所へ行くと、待ちくたびれたように、交代を待っていた阿木くんがいた。



「こう見えてダッシュで来たんだけどな~」



「前髪立ってるからわかる。直した方がいいぞ」



うそん!慌てて前髪を整えるあたし。阿木くんは疲れた、というように立ち上がった。



「あの~、山下くんは?」



「まだ来てねーぞ」



「……そっか」



もうすぐ来るかな。そう思いながら、阿木くんが座っていた椅子に腰掛ける。



「山下と何かあったわけ?」



「えっ、なんで!?」



「いつものお前なら待たずに探しに行くだろ」



「あ~うん、今日は待とうと思って!」



探しに行ったって、どうせ顔を背けられることくらい分かってるもん。



「仲直りして、告白上手くいくといいな」



そう言って、背を向けて歩き出した阿木くん。『ありがとう!』って叫ぶと、少しだけ振り返って手をあげた。



あの阿木くんですら、応援してくれてるんだ。これは、告白を成功させるしかない!



ガタッ



すると、隣のイスに誰かが腰掛ける音がした。あたしは反射的に振り返って、その人物を見た。





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