ストレートラブ





「ちわっす!」



でも、その人物は山下くんじゃなくて、里津くんだった。



「あ……れ?里津くんがなんでココに?」



「頼まれたんで来ちゃいましたー」



「頼んだって……山下くんが?」



「そうっす」



あたしの胸の中で、何かが崩れ落ちる音がした。



そうか、あたしの顔も見たくないくらい、山下くんは怒ってるんだ。仲直りしたいなんて思ってたあたし……バカみたいじゃん。



それから、何も話さずに受付係を開始。午後からステージメインだからか、たくさんの人が訪れた。里津くんはスマイル全開で対応してくれて、女性客からの支持も高かった。



「何も聞かないんすか?」



それからお客さんの入りが少なくなった頃、里津くんが聞いてきた。



「何も聞くことないよ?」



「紘樹のこと、とか」



いつもはお喋りな里津くんが話しかけてこないなんて変だなって思ってたけど、彼も彼なりに何かを察していたみたいだ。



「あたしが喜ぶようなことなら聞くよ」



「受け止め方は沙良さん次第っすかね」



「じ、じゃあ聞かない!」



「そうっすか」



そう言って、残っているパンフレットを、パラパラっとめくる里津くんだった。





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