執事と共に賭け事を。
「探し物、かしら」


つんと、香水が強く香った。


「ツバキさん」


赤のナイトドレスを身に纏ったツバキが立っていた。

深いスリットが、なんともいえない色香を醸し出している。


「さっきから、随分必死な顔で走り回ってるわね。めったにそんな顔見せないのに」


きちんと整えられているはずの春樹の髪は、走り回ったことにより乱れていた。

春樹は、ため息をついてその髪を掻き揚げた。


「貴方をそんなに必死にさせるなんて、妬けるわね」


ツバキは、全てを見透かしているかのような口調で笑った。
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