彼を捕まえろ!〜俺様男はハート泥棒〜
図書室の扉が開く音がして私は我に返って音がした方を振り向く
斗真くん?
私はそう思った途端にその場から離れて本棚の陰に素早く身を隠す
すると予感は当たったらしい
少しして斗真くんが歩きながら入ってきた
「あれ…?あいつまだ来てない?」
私のことを言ってるのだろうか?
斗真くんが私の今まで座っていた位置に腰を下ろすのが見える
私はこんな状態でもそんな斗真くんに見とれていた
斗真くんは持っていた本を何ページかペラペラと世話しなくめくっている
そしてゆっくりと顔を上げて窓の外に視線を落とすと視線はすぐに一定の位置で止まる
ああ…
あれは私の初めて見たやさしい笑顔
私はその横顔を見て、フラフラと立ち上がる
そして静かに踵を返して図書室の扉まで行くと
勢いよく飛び出して廊下を走っていた
嫌だ
見たくない
知りたくない
今までのバラバラだったパズルのピースが全て正しい位置にはまっていく感覚