彼を捕まえろ!〜俺様男はハート泥棒〜
水やりをしている優ちゃんがそこには立っているのだから
私は今見た現実から逃げるように、全速力で校舎の中を駆け抜けていた
苦しい
苦しい
誰か助けて
もつれる足
どこをどう走っているのかさえわからない
ただどうしようもなく悲しい
やがて校門が見えて来て
そこに浬世也の後ろ姿を見つける
浬世也
浬世也
ガッ━━━━……!!
「うお…!?」
私は浬世也の背中に目掛けて思いっきり抱きついていた
「え…!?菜々子?」
突然抱きつかれて驚く浬世也にお構い無しに、私は尚も力強く浬世也に抱きすがる
「…う〜…っ…ヒック…」
「━━!?…っ…菜々子…?……泣いてるの?」
周りに少し人がいたけれど気にしていられない
「…浬世…也…助けて…ヒック…」
「……っ…」
浬世也も周りを気にする様子もなく、クルリと体の位置をひっくり返して私を抱き止めてくれた