彼を捕まえろ!〜俺様男はハート泥棒〜
休み時間に入って斗真くんが私たちの席に近づいてくる
「あ、優ちゃん…あたしトイレ行ってくる…」
「え?」
優ちゃんの返事も聞かず、すぐに椅子から立ち上がると、斗真くんから離れた扉から小走りで飛び出していく
こんなことをしても意味ないけど
でも優ちゃんと楽しそうに話してる斗真くんを、近くで見る準備が私には出来てない
斗真くんにとっては私がいない方が好都合で
私は今まで優ちゃんと仲良くなるための、橋渡しにすぎなかったのかもしれない
そのことを考えると胸がズキンズキンと音をたてて痛んだ
「はぁ…」
私はそんなことを休み時間が来る度に、何度も何度も繰り返していた
そうして、もう放課後がこようとしている
教室には人はまばら
斗真くんもさっさと教室から出ていっていた
「ねえ?菜々、今日はずっと変だったよ…大丈夫?」
そりゃそうだよね
休み時間の度にトイレだ何だで、ほとんど教室に居なかったし
「うん…ちょっと疲れた…」
私はそう言って帰りの準備をしてから教室を出た