DIA-ダイヤ-
目深にかぶったキャップからは、口と鼻しか見えない。


(口が……笑ってる??)


小さな箱を片手に男はサッサと出ていく。


(あ!自分で食べるんだ!わざわざ自分の食べたいケーキを一個だけ買いに来るなんて、ちょっと可愛いかも)


そう思ったら少し可笑しかった。


私はフルーツがいっぱい乗ったケーキを2個選ぶ。


「以上でよろしいですか?」


「はい……」


「ありがとうございます」


「あ、あの、あとモンブランも下さい!」


どうしても気になって買ってしまった。


花柄の箱に入ったケーキを持って、歩き疲れていたこともすっかり忘れてドアを開ける。


ふと店の前にある小さな噴水が目に入った。


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