DIA-ダイヤ-
「放せよ!」


悠斗が声を荒げる。


初めて悠斗の激しい怒りに触れて体が強張った私の手を、悠斗は無理矢理引き離す。


そして怒りに満ちた低い声で私を見下ろして言った。


「帰れ」


氷のような、悠斗の目。


(このまま帰るなんていやだ。理由言わなきゃ!)


悠斗は口を開こうとする私に背中を向けて、店の奥に歩き出す。


「悠斗!待って!」


諦め切れない私に、悠斗は振り返ることなくボソリと言葉を投げ捨てた。


「…うぜーんだよ」


呆然と立ち尽くす私。


「店長、ごめん。ちょっとだけ休憩行ってくる」


佐山にそう言い残して悠斗は店の奥へ姿を消した。


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