DIA-ダイヤ-
以前ならきっとここで母に対して怒りを感じていたはず。


面会にも来ないくせにって。


でもどうしてかそんな気持ちにはならない。


(お母さんもお父さんは帰ってこないし私は入院するし、大変なんだろうな)


母への新しい感情が芽生え始めていた。


母は私の母である前に一人の人間なんだと、母なりの苦悩があるんだと、心の中に広がっていく。


淋しさを隠しながら母を拒絶してきた私は、自然に母に気持ちを伝えていた。


「お母さん、もう少しここにいてくれる?」


母は私の言葉に驚き一瞬戸惑ったけど、頷いてベッドの横の椅子に座った。


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