千年真祖は嘲笑う
寸分の狂いもなく、馬上の俺目掛けて襲いかかってきた複数の杭を。

「フン」

俺はその身を黒い霧状にする事で回避する。

如何なる攻撃も、霧を貫く切り裂くは叶わない。

完全に杭を回避した事を確認し、姿を元に戻しながら。

「写本は写本でも…その本はネクロノミコンの写本かな?」

不敵に笑いながら言ってやった。

「ネクロノミコン?…ああ、かの有名な魔道書の事ですか」

アラビア人『アブドル・アルハズラット』が著わしたとされる魔道書であり、複雑多岐に亘る魔道の奥義が記されているとされ、それ故か魔道書そのものに邪悪な生命が宿る事もあるという。

が、ネクロノミコンはどちらかといえばヴァチカンよりも我ら闇の眷属に近しい書物であり。

「そのような悪しき書物に、私達は頼りません」

そう言ってイリイアは手にした本に見えぬ視線を下げた。

「これは“精製ノ書”…私の目から派生させた、森羅万象あらゆるものを分解、再構築して自在に操る事のできる魔道書です」

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