超短編 『夢』 9
夢貸します
『夢貸します』

そんな看板を見つけ、思わず入ってしまった。
そこはドリームバンクだった。

「いらっしゃいませ」
受付の女性が笑顔で迎えてくれた。
「今日はどんなご用件でしょうか」

「あの、夢を借りたいなと思いまして」

「初めてのご利用でしょうか」

「はい」

「では、3番の窓口で承ります。そちらへどうぞ」

示された窓口を見ると、二人ほど先客がいるようだ。

近くのソファに座って待つことにした。

20分程待たされてようやく俺の番が来た。

「コレをつけてください」
窓口の女性にヘッドホンを渡された。

つけると癒し系の音楽が聞こえてきた。
そして、この夢銀行のシステムを説明する声が流れはじめた。

いつの間にか眠っていたらしい。声をかけられて目が覚めた。

「登録が終りましたので、この通帳とカードをお渡しします。夢を借りるとき、返すときはご記帳下さい。なお、使用はご本人様に限りますので、ご注意下さい」

ヘッドホンが私の脳と直接交信する装置らしい。
必要な情報のやりとりは勝手にしてくれたようだ。

使い方や夢の貸し借りのシステムが頭の中に入っている。
俺はさっそく自動夢預払機へといった。

カードを入れ、それから通帳を入れた。

そして備え付けのヘッドホンをつけて、ボタンを押した。

この機械には、借りると返すの二つのボタンしかついてない。

当然押したのは、借りるだ。

あとの細かいことは、直接脳とするらしい。

すると音楽が流れてきた。

今、俺の脳に夢の材料が送られているのだ。
それが基になり、寝ると夢が見られるらしい。

早く帰って夢を見たい。

家に着くなり、俺はベッドにもぐり込んだ。

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