超短編 『夢』 9
「おい、何か変だ。大変なことになっている」
自動夢預払機担当が真っ青な顔で叫んだ。
「プログラムにミスがあるぞ」
上司が聞き付けやって来た。
「どうしたんだ」
「先程夢を借りていかれた男の人に、有り得ない夢を伝達してしまいました」
「それはどういうことだね」
「実は夢を見せるプログラムにバグがあって、見る夢がエンドレスになってしまい、目が覚めないかもしれません」
「それはまずい。直ちに夢の回収だ」
「無理かも知れません。外部からの刺激を一切受け付けません。プログラムが一部書き換えられています」
「誰が一体書き換えたのだ」
「前回、夢を回収した時に、その夢の持主の脳波が強くて、その影響のようです」
「対処方法は、何かないのか」
「夢を見る前に、夢を回収しなければ、永遠に眠ってしまいます」
俺は夢を見ていた。
とても気持ちのいい夢だった。
言葉では表せないほどの幸せが俺を包んでくれている。
こんな夢ならずっと見ていたい。
そう、仕事や人間関係やすべての煩わしいことを捨てて、、、。
ずっと、ずっと、死ぬまで。