【短】もう一度、君に
「…助ける、ため?」
不思議そうに首をかしげる雫に、今出来る最大限の笑顔を向けた。
『そう、君は今眠って夢を見てるんだ!
だから君を、迎えに来たんだ』
「…でも私は、何も分からない。
自分の名前しか思い出せないし、あなたの事も誰だか分からない。それなのに、眠ってるって言われてもどうすればいいのかも分からない」
あぁ、これは雫が悲しい時にする瞳だ。
それが分かってても溢れそうな涙1つ抱きしめて拭ってやる事も今は出来ない。
それでも、俺はこの3日にかけたんだ。
だからこそやってやる。
俯いた雫の手のひらを掬い上げてギュッと握ると、驚いた表情で俺を眺める彼女と目が合った。
『分からないなら教えてあげるよ、俺は君を知ってる。君を助けるために来た…うーん、魔法使い的な!』
苦し紛れに言ってから雫を見ると、まだ少し驚いた表情だったけど何度か瞬きをしてから目を閉じた。