淡雪恋話
待ち合わせの神社に行くと、クラスメイトが揃っていた。
いや、一人だけいない。
隆志君だ。
出店の賑わい、初詣の希望に満ち溢れた参拝客。新しい年を迎えたというのに、クラスメイトだけが一様に表情が暗い。
「あ、みいちゃん……」
クラスの女の子達が私に気付いて、ちょっと躊躇いながら私の傍に歩いてきた。そしてにっこりと笑うと、みんな一斉に「ありがとう」と頭を下げた。
意味の分からない私は、「え、え?なんですか?」と慌てるしかない。
ケイちゃんが顔を上げてこう言った。
「五月のお母さんから聞いたの。最期まで一緒にいてくれたのは、みいちゃんと隆志君だったって。五月はいつでも明るかったから、みんな友達のつもりでいた。でも本当の友達ってみいちゃんだけだったんだって思うと、情けなくて悲しくて……。でも看取ってくれたのが隆志君とみいちゃんだったのなら、きっと五月も幸せだっただろうって……」
「……何が分かるの?」
私の言葉に驚いた女の子達は、一斉に顔を上げて私を凝視する。
そんな彼女達に、私は激情を叩きつけた。
「五月ちゃんがどれだけ苦しんで、どれだけ悲しんで、どんな葛藤があって、それでも隆志君と一緒にいたいって思って、その為に自分の命の全てを注いでしまった事の、何をあなた達は分かっているの……?」
瞳に涙が滲む、体が震える、言葉も震える。涙は出ても、私を支配しているのは悲しみじゃない。怒りだった。
自分でも言っている事が無茶苦茶なのは分かる、分かっている。
きっとそんな苦しみ、多分死に目を看取った私にだって理解できていないだろう。
でも、それでも言わずにはいられなかった。
「分かった風な口調で、彼女と隆志君と私の間に介入しないで」
もう、こんな場所になんかいたくない――
神様なんか何もしてくれないのだから――
私はそう心の中で呟くと、絶句しているクラスの女の子たちを残して、家に帰った。