淡雪恋話

「あ、みいちゃんのお弁当、美味しそう~」
 五月ちゃんは興味津々だ。私はそんな五月ちゃんのお弁当に、私の玉子焼きを少し笑いながら置いた。


「え? くれるの?」
 驚いた顔の五月ちゃんって可愛い。


「私の手作りだから、あんまり期待しないで下さいね」
 私がそう言うと、五月ちゃんは「いただきま~す」と言って、玉子焼きを口に放り込んだ。
 モグモグモグ……思案げな表情で、口を動かす事数回、その後で五月ちゃんは、とびっきりの笑顔を隆志君に向けた。


「隆志、凄いよ。みいちゃんの玉子焼き、絶品」
「へえ~……みいちゃん、俺ももらっていい?」
 私は笑顔を向けると、隆志君のお弁当に、私の玉子焼きを置いた。
 隆志君は「へえ~」としきりに感心しながら、玉子焼きを頬張る。


「……あ、ホントに美味いわ。こりゃ五月じゃ絶対勝てないなあ」
「隆志~……」
 五月ちゃんが隆志君を睨むと、隆志君は「わはは」と笑って、五月ちゃんの手作りであろうお弁当をバクバク食べ始めた。


 くすくす、と笑ってしまう。
 私は友達とかいなかったし、第一勉強して、図書館で借りてきたハードカバーを読んで、小説を趣味で書いていたらそんなに時間に余裕なんかなかった。
 だから別に、友達とか必要と感じた事がない。

 でも、五月ちゃんと隆志君のやり取りは楽しくて、私を笑顔にしてくれる。
 私はその時になって、初めて感じた。
 『友達っていいかも』と――


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