その手を離さないで


――ガシャン…。



派手な音を立てて、あたしの足元に時計は転がる。



オーソドックスな、目覚まし時計。



「分かった…。帰るね。ごめんね、蒼ちゃん」



涙をこらえながら、あたしは蒼ちゃんを見る事もできず、



病室を出て行った。



「泣くのは、家に帰ってからよ」



涙でぼやける景色を見ながら、あたしは強がるだけで、精一杯だった。




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