アタシ、と、スキナヒト。
カタツムリと遠足のオヤツ300円。
初恋、と呼ばれる、甘い響きに含まれるもの。
知らないものにひきつけられる感じ。
ずいぶんと薄れてしまった、その夢を思うとき。
アタシに浮かぶのは、なお君のことだ。

なんてことない、幼なじみ。
なんてことない、ご近所さん。
なんてことなく、アタシはナオ君に恋をした。

二人で育てたカタツムリ。散歩をさせたら、逃げてしまった。
二人で買いに行った遠足のオヤツ。ナオ君が計算してくれた300円。

世界がまだ、家と学校だけしかなかった。
近所の公園は、秘密にあふれていた。
小さな小さな視界の中は自由がいっぱいで、自由が恐いものだなんて知らなかった。

ナオ君は、きっと、覚えていない。
けど、アタシも、恋の終わりを覚えていない。
綺麗におあいこ。

恋の甘さの始まりは、それでも、そこにあった。
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