アタシ、と、スキナヒト。
魔法の手
初恋、と呼ばれる、その甘い響きの裏にある痛み。
そんなものが隠れていることを知った時。

初めての痛みを思うとき、浮かんでくるのはセンセイのことだ。

色なら茶色。
動物ならネコ。
楽器ならトロンボーン。
アタシにとっての、大人。

センセイは、アタシの世界に初めて現われた、オトコノヒトだ。

ピアノが苦手だと笑いながら、音楽を奏でた。
アタシは、初めて音楽を聞いたような気さえしたの。
恋と呼ぶには早すぎて、毎日を駆け出すような気持ちを持て余してばかりだった。
棒切れみたいな手足をのばしたまま。
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